こんにちは、ITKJです。
ここではジャズセッションについて僕の体験談からギタリストの視点で、ジャズセッションの話の為の環境整備的な事を書いてみようと思います。
というのも、ここで書いてあるものや見方は僕の個人的な見解であって一般論ではありません。
まったく違うご意見の方も沢山いらっしゃることと思います。
この記事が正解ではないという事を最初にお断りさせてください。
それでもジャズセッションに関心はあるけど参加できずにいらっしゃる方へ、僕の今までの体験から僕が参加する時に心がけている事を中心にはじめて参加するジャズセッションが「楽しかった!」となる事に焦点を当てて少しでもお役に立てる記事になるように書いてみようと思います。
僕のジャズセッションデビューはそれはそれは悲しくて心細くて辛い思い出です、今思い出してもあれは辛かったです。。
これを読んだ方が僕と同じ目に遭わなくて済むように、またそんなにジャズへの深い理解が無くてもこの記事にある事を知っておけば楽しくセッションを過ごせるようになる事を第一の目標として書いてみます。
僕はギターなので記事が全体的にギタリスト視点なのですが、他の楽器の方にとってもジャズセッションに行ってみたいなと思ってる方にはお役に立てる事が書いてあると思いますので読み進んで頂けたらと思います。
ジャズにおけるフロントとリズムセクションについて
ジャズセッションの実際の流れの前に、話の「土台」になる事柄について最初に何点か書いてみようと思います。
「フロント」と「リズムセクション」の役割
ちょっと当たり前に思われるかもしれませんが、他のジャンル同様にジャズでも楽器の役割があります。
でもこの役割の理解は大切で特にジャズにおけるギターの役割(立ち位置)は他のジャンルよりも特殊だと僕は思っていまして、この事を認識しておく事はとても重要だと思います。
ちなみにここは特に異論のある方がいらっしゃる所かと思いますのであくまで僕個人の意見として聞いて頂けたらと思いますが、しかしこの価値観を少し取り入れておく事で損をする事はないと思います。
フロント楽器は主に管楽器や弦楽器等の旋律を奏でてコードを担当しない楽器、リズム楽器は主にピアノ、ギター、ベース、ドラムです。
これは一般的にもよく説明される区分になるかと思います。
フロント楽器は実際にはとても括り切れられず、リズム楽器以外のありとあらゆる楽器と僕は思っています。
そして、リズム楽器はバッキングを担当します。
ただここで、はじめてジャズセッションにギターで参加される方へ僕がお伝えしたい事があります。
セッションに慣れないうちはギターはフロントとして参加する
これは、かなり消極的な提案になります。
はじめてジャズセッションにギターで参加する際、セッションに慣れるまではギターはリズム楽器ではなくフロント楽器という認識で参加する事をお勧めます。
そしてメンバーにピアノがいる時は、ギターはバッキングに参加しないという選択肢を持つ事をお勧めします。
自分がテーマやソロをとっていない時は、管楽器の方と同様に音を鳴らさないで待つという事です。
「ただ立って待ってるの?」と思われるかと思うのですがそうなんです、他の方がアドリブをとられている時は管楽器の方と同様に立って待つ事をお勧めします。
念の為にもう一度書いておこうと思いますがここでお伝えしているのは「はじめてジャズセッションに参加される際にお勧めしている事」です、通常ギターは一般的にはリズム隊として扱われると思います。
もちろんメンバーにピアノがいない時はギターがピアノの役割を担います。
ジャズはベースの方が強拍で1度5度の音を鳴らし、ピアノの方が主に弱拍で3度7度+テンションの音を鳴らして音楽の土台を作っています。
ロックやブルースとは違って、ジャズではバックの音はベースとピアノだけで十分という所があります。
不必要にギターも音を鳴らしてしまう事が多発すると、強拍のアクセントの比重が増えたりテンションの音が分厚くなったりしてしまいアドリブをしている方にとって「なんか違う。。」という感じがしてアドリブがとりづらく感じられる為ほとんどの場合好ましく思われません。(とはいえ例外も多々あります)
もちろんセッションですので鳴らしてはいけないという事は決してありませんが、その見極めはジャズの演奏経験を少し積んでからの方が無難かと思います。
僕ははじめてジャズセッションに参加した時、「ジャズの事よくわからないからバッキングで少し参加させてもらってどんな感じなのか見てみよう」という思いで参加しました。
譜面の通りにコードを弾いていれば大丈夫なのかなという気持ちでいました。
しかしそこで大変な目に遭いました、バッキングってめちゃくちゃ難しい!のです。
はじめてジャズセッションに参加する時にフロント楽器として参加する事をお勧めするのは「リズムセクションはそもそもハードルが高い」「ピアノのポジションは難しい」「準備する事を明確にできる」の3点の理由からです。
理由1:リズムセクションはそもそもハードルが高い
セッションに参加される多くの方のリズムセクションのイメージが「ピアノトリオ」である事が多いと思います。
ここで書いているハードルとは、ジャズセッション参加者の多くの方が想定している演奏形態が「ピアノトリオのイメージ」であるという事です。
ジャズセッションで扱われるスタンダード曲は「ピアノトリオ+フロント楽器」という編成の音源が圧倒的に多いです。
ジャズの名盤と呼ばれるものも、もちろん様々な形態がありますがそのほとんどは「ピアノトリオ+管楽器」というものです。
ジャズセッションにはじめてギターでバッキングに参加する時、みなさんが持たれているこのイメージのハードルはとても高いと思います。
イントロ等を考えてみても参加者さんはピアノのイントロには慣れているのですがギターのイントロにはほとんどの方が慣れていません。
ですのでしっかりとした内容でかつわかりやすいイントロを弾かないと、メンバーの方にうまく伝わらない事があります。(イントロ等に関しては後述します)
そしてここも難しい面なのですが、ギターのイントロはたとえ内容がしっかりしていてもアンプのセッティングがある程度しっかりできてふさわしい音になっていないと聴き手にとっては「なんだかよくわからない」ものになってしまう面があります。
不慣れなお店で不慣れなアンプでちょうど良い音量と適度なイコライジングをシールドをつなげてすぐにばっちりにする事は難しい所があります。
もちろん運よく使い慣れてるアンプが設置してあるお店の場合はとても助けになります。
ジャズセッションにはじめて参加する場合は、この点でかなりの確率で心がいっぱいいっぱいになってしまう事になると思います。
というか今の僕では、この事は相変わらずとても高いハードルです。
もちろんセッションホストの方の進行によって「ギタートリオ」でセッションするとなった時に共演する方からNGが出る事はまずないと思います。
ギターは、「和音を鳴らせる事」「打楽器的な側面がある事」の2点からジャズセッションではピアノと同じ役割を与えられると思います。
ですのでギターでリズム隊に参加する時、基本的にはピアノと同じ立ち位置になります。
しかし、イントロやバッキングなどでピアノと同じ役割を果たす事は基本的にギターの楽器の性質上できないのです。
ギターのバッキングはギターの特性を生かしたものになりますが、そのイントロもバッキングも技術次第でピアノバッキングに近いものには出来ますがやはり「まったくの別物」になります。
意外とギタートリオを面白がって頂ける心優しい方も多くいらっしゃったりもしますが、やはり普段の練習の成果を想定していたピアノトリオでセッションしたいと思ってる方のほうが僕の感覚では多く感じます。
ですのでジャズギターのレッスンを受けて準備が出来ているとか普段から十分な研究と練習を積んでいるといった場合でない限り、ギターでリズムセクションの役割に立つ事はハードルが高いのでフロントとして参加をする事をお勧めします。
理由2:ピアノのポジションは職人技
リズム隊として参加する時、フロントの方が一体どんな曲を持ってくるのか前もって知る事ができません。
良くてステージに上がる前に席でお話してる時に次演奏する曲を教えてもらえる事もありますが、多くの場合はステージに上がってから曲を知る事になると思います。
知ってる曲であれば少し安心できますが、基本的にはリズムセクションは初見演奏でコード譜を追いかける事になります。
はじめて参加するジャズセッションでこれに不足なく対応する事は困難で、知ってる曲でも暗譜出来ていなければ譜面を追いかける事に変わりはありません。
更に初めての参加で知らない方に囲まれて、それだけでもテンパっている上に知らない曲なので反復記号も見落すわけにもいかず譜面を必死に追いかけるので周りで何が起きているのかもわからなくなりますし合図も見れません。
知らない曲だと更に一度でもロスト(譜面上で迷子になる事)するとリカバリーも困難です、演奏を止めて確認するわけにもいかず走り続けながら今の位置を頑張って確認するしかありません。
また上でも少し書きましたが、ピアノで表現できる事とギターで表現できる事はそもそも「違うもの」と僕は思っています。
ピアノが鳴らせるコードをギターでは鳴らすことができない面もあります。
ちょっと極端な例になってしまいますが、例えばピアノでは「CのトライアドとDのトライアドを同時に」鳴らせたりするのですが、ギターだと「C on D」として弾く事になったりします。
ジャズセッションでは暗黙の了解事項がちょこちょこあり、ただコードを追っかけているだけがバッキングの役割ではない所があります。
コードを追いかけながら、ピアノの方はすごくざっくりとですが「ルート音と5度の音は強く鳴らさない」「主にウラ拍で鳴らす」というような事を意識して演奏をされます。
とはいえ実際にはルート音を鳴らす事も表拍でバッキングする事も多いそうですが、そのバランスの見極めはなかなか職人技です。
これを、はじめて参加するジャズセッションでいきなりギターで対応するのは至難の業になってきます。
またギター弾き語りでよく使われるようなコードフォームでずっと弾くと、ルート音や5度の音が基本的に入っていますのでバッキングがとても重たくなってしまいます。
これに関してはジャズのバッキングで使えるボイシングについてある程度学んでおく必要が出てくると思います。
ジャズにおけるピアノのバッキングの仕事は重要で、その役割を果たす為の練習やセッションスタンダードへの理解にはものすごく時間がかかります。
また明確に与えられる仕事があります。
「イントロ」という仕事です。
イントロには定石のような進行や形式、曲固有のお決まりイントロなど様々な「暗黙の了解事項」の様なものがあります。
これをある程度知っておかないとイントロをとることは出来ず曲が始められないのです。
以上の事からピアノのポジションの職人性は感じて頂けるかと思います。
ただ誤解されたくないのは、ここで僕は「ギターでジャズのバッキングは出来ない」と主張しているわけでは勿論ありません。
実際に様々な方がギタートリオ+管楽器という編成でライブをされたり音源を残されていたりします。
ここで書いている事はあくまでも「はじめて参加するジャズセッション」という視点で、参加して楽しかったと思ってもらえる事を目標とした提案です。
はじめて参加するジャズセッションでいきなりギタートリオのポジションに立つ事は避けて、少しずつジャズセッションにおけるリズムセクションへの理解を深めていくほうが楽しくまた有意義にジャズセッションに参加できると思います。
理由3:準備する事を明確にできる
先にも書いた通りジャズセッションでは基本的にはフロントの方が曲を指定してきますので、リズム隊になるとどんな曲が来るのかわかりません。
ならば解決策は簡単で、フロントとして曲を指定する側に立ちましょうという提案です。
バッキングやイントロへの不安からもフロントとして立つ事で全て解決します。
またどんな曲をするのかわからないという不安からも解放されます。
こうすればイントロもピアニストの方にお願いする事も出来ますし、もしピアニストさんもジャズセッション不慣れであれば自分でイントロを準備して弾く事も出来て当然学びにもなります。
ひとつひとつ着実に覚えていくこともできます。
良い事しかありません。
この考え方を取り入れるだけでジャズセッションの世界が一気に近づいてくるのではないかなと思います。
自分がテーマとアドリブが取れるように準備する曲は5曲もあれば十分ではないかと思います。
セッション参加へのお勧めする準備項目についてはまた別の記事にまとめてみようと思います。
そして、ここが重要なのですがテーマを覚える事とアドリブを研究する事も十分過ぎる課題だったりします。
フロントとして立つ事は決して簡単なものではありませんが、しかしジャズセッションに参加するにあたってのハードルはぐっと下がるのではないかなぁと思っています。
まとめ
これからジャズセッションに参加してみようかなという方へ心の負担を減らす事を目的として書いているはずなのに、なんだか逆方向の記事のようになってしまいました。
でも僕は初めて参加したジャズセッションの恐怖体験のおかげで、次の参加まで実際に数年かかってしまいました。
自分とおなじ経験をしてジャズが嫌になってしまう人が一人でも減る事を目標にして書いてみました。
ですので、はじめてのジャズセッションの参加は是非フロントとして参加してみる事をお勧めします。
お店に入って受付の方かホストの方へ「バッキングが難しいのでフロント専門で参加させてください」の一言を是非伝えてみてください。
お店の方もホストの方も、きっと好意的に思ってもらえると思います。
これを伝えた後で「いやいや、そんな事は言わずに今日は人も少ないしバッキングでもはいってください」と言って頂ければお言葉に甘えて練習させてもらえばいいと思います。
次の記事ではリズム隊についてもうすこし知っておくと良いのでベース・ピアノ・ドラムのジャズセッションでの役割を掘り下げてみようと思います。
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